※補聴器を装用しても音の反応が全くなかった息子。2012年3月、1歳6か月で人工内耳手術をしました。
『お耳の成長記録』として、人工内耳を装用してからの息子の様子、聴こえの変化、ことばの表出記録などを、当時のメモをもとに過去を振り返って綴っています。
まとめはこちら>>>『お耳の成長記録』
人工内耳装用23週間目(1歳11か月)
息子が人工内耳を装用して6か月。2歳が目前の頃の話です。
家族会議(人工内耳の両耳装用について)
最近では人工内耳の両耳装用者が増えていますが、当時(2012年8月)は、一部の医療機関のみでしか対側の耳の人工内耳手術(セカンド手術)はしておらず、両耳装用者は非常に少ない時代でした。
息子が人工内耳手術を受けた大学病院ではセカンド手術はまだ行っていませんでしたが、私は診察の度に、できればセカンド手術を受けたい旨を伝えていました。
しかし、担当医師からは、
「セカンド手術はしません
片方でも聞こえれば言葉は習得できるようになるから大丈夫」
だと言われていました。
大丈夫って何ですか?言葉を覚えることですか?
耳は二つあるのに、片方だけで十分とは私には思えませんでした。欲張りでしょうか。
聞こえる方法があるのに、もう片方の耳が使えないなんて。
他の病院では手術してくれるのに、どうしてダメなんだ。
不公平だと思っていました。
一方で、医師自身の考えとして、
そのうちにガイドラインが変わり(日本耳鼻咽喉科学会が出している人工内耳手術の適応基準)セカンド手術はできるようになるから、それまで待っても遅くはないというものでした
早くにした方がいいという意見もあるけれど、片方の人工内耳だけで言葉を習得していくことはできるから急ぐ必要は感じない
医療機器が進歩しているから、性能のいいインプラントがこれから出てくるのは間違いない
とおっしゃっていました。
これに納得したわけではありませんでしたが、親身になって答えてくださる先生の話も理解はしていました。
そして、息子のセカンド手術に関しては、もう一つハードルがありました。
夫と祖父母です。
私以外の家族は、セカンド手術は「本人の意思で手術した方がいい」というものでした。
その意見も至極当然です。必要不可欠な手術でないですからね。
本人から「こっちも聞こえるようになりたい。人工内耳手術を受けたい」と言われて手術を決められたら、それが一番理想だと思います。
でも、本人の意思っていつ聞けるようになるのかな
子どもが自分で決断するには責任が重すぎやしないかな
小さい時の方が手術への心的負担が少ないのではないかな
幼児期から両耳で聞く方が慣れないかな
など、「本人の意思で決める」ということに関しては共感する部分もあり、そうでない部分もあり、私も答えが見つからないところでもありました。
そんな中、この頃家族で話し合って出した結論は、
セカンド手術に関しては、もう少し時間が必要
というものでした。
家族みんなの気持ちの一致。
そして何より息子にとって本当に両耳装用が望ましいのか、セカンド手術が必要なのか、私自身ももう一度考え直してみようと思いました。
当時は人工内耳の両耳装用者(装用児)が本当に少なかったのですが、これがいろんな方に体験をお伺いするきっかけとなりました。
人工内耳の両耳同時手術
さて、最近は人工内耳の両耳同時手術が選択できる病院もあるようですね。
両耳の裸耳聴力、補聴器の聴こえ、年齢、そして成人の方だと失聴の期間など、それぞれ背景は異なるので、両耳同時手術が第一選択肢になることはあまりないと思います。
しかし、先天聾の重度難聴で補聴器装用の効果がないお子さんの場合、両耳同時手術を選択することができるようになったのはとても大きな進歩ですね!
選択するかしないかは自由ですが、道が開けているっていうのは素敵なことですね。
きっと今息子が生まれていたら両耳同時手術を選んだだろうと思います。そうしたらこんなに悩みを抱えることはなかったかもしれません。
結局ここから1年半後にセカンド手術を受けることになったのですが、その1年半で悩みすぎて私一人10歳くらい歳をとった気分です。悩み苦しみました。
現在は少ないかもしれませんが、お子さんのセカンド手術に悩まれている方がいらっしゃると思います。
わが家のように、家族間で意見の相違がある場合もけっこうあるのかなと思います。
もっと聞こえたらよいとは思うけれど、本人の意思で手術したいというご家庭もきっとありますよね。
ある程度大きなお子さんの場合は、やはり本人の気持ちが一番大切だと思いますし、むしろそれなくしては手術を受けることはないですよね。
手術時期が遅くて人工内耳の装用効果がないのではという点についてはケースバイケースのようですが、本人の気持ちが伴っての手術であればハビリテーションも頑張れそうですね。
また、「セカンド手術はしない」という選択ももちろんありますね。
人それぞれ、決断に至るまで悩み深い思いがあると思います。
人工内耳を装用しても聞こえる人と同じように聞こえるようになるわけではないこと
この事実を受け入れて、生活のどこに落とし込むということなのかな
生活音
会話
テレビや映画
電話
複数で雑談
会議
教室での講義
講堂での講演
防災無線
駅や車内でのアナウンス
どれも両耳装用になれば聞こえるものでもありません。
それでも両耳装用を望むのは、もっと、あと少し、ほんの少しでもいいから、聞こえるようになりたい。
その可能性にかけてみたいから、なのかな。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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