難聴赤ちゃんの子育て
言葉育ては家庭にあり

人工内耳装用28週間目

※補聴器を装用しても音の反応が全くなかった息子。2012年3月、1歳6か月で人工内耳手術をしました。
お耳の成長記録』として、人工内耳を装用してからの息子の様子、聴こえの変化、ことばの表出記録などを、当時のメモをもとに過去を振り返って綴っています。
まとめはこちら>>>『お耳の成長記録

 

人工内耳装用28週間目(2歳1か月)

わが家の療育の根底となった講演


発語が一向に増えず、苦しい日々が続いていました。

そんな時、夫と参加したある講演で、目の覚めるような思いを経験しました。

当時は今ほどネットで情報を発信している方も少なく、情報を得るには講演会もしくは当事者にお会いするのが一般的でした。

そんな状況でしたので、講演会はとても貴重な情報源であったことは言うまでもないのですが、この講演会で得た内容は過去にも現在にもないほど衝撃を受けました。わが家の療育はここから誕生しました。

一部当時のメモのまま、以下に記載します。

 


 

言語習得を、

生活言語獲得のボトムアップ学習言語習得のトップダウンに分けるならば

息子はまさにボトムアップで言葉を覚える時期。

生活や遊びの中で、リアルタイムにやりとりしていく中で子どもは言語を獲得する

この時期は、病院や学校では生きた言葉は学べません。

だから、親は先生のテクニックを学んで、それを家庭の中で落とし込んでいくことが重要

 

かといって、難聴児が言語を獲得する道筋が健聴児と違うかといえばそうではない。

健聴児と同じ道筋(アプローチ)でないと、抽象的な概念や思考を獲得するのが難しくなる

これが9歳の壁を大きくする。

会話から言葉、話を理解し、イメージする。それに対して自分の意見を伝える。家族の会話からその土台が培われる。

 

聴覚的な経験が少なくリアルタイムの会話がない場合の例。

(以下の会話は創作です)

 

ある日の家族の会話

父:今日は焼き肉に行こう!

母:お父さん、先週検診で血圧がひっかかったから、脂の多いお肉はダメよ。それに来週は山田さんとバーベキュー行くでしょ。

姉:私もお肉が食べに行きたいな。あ、そうだ!野菜も多いしゃぶしゃぶならいいんじゃないの?

母:それならいいわね。少し前に近所に新しいお店ができたわよ。そこにしましょうか。

父:よし。混み出す前の5時半には出かけよう

 

たわいのない短い会話ですが、この中に家族のたくさんの思考やりとりが含まれます。

父は焼き肉が食べたい→

血圧高いし来週BBQあるからダメ→

それにBBQの予定も近々ある→

でも姉も食べたい→

野菜も食べれるししゃぶしゃぶならOK→

5時半にでかけよう

 

それが、この家族の中にいる難聴児が

「今日はしゃぶしゃぶよ。5時半に出かけるよ」

という結果しか

聞かされない状況を作り出していたらどうですか?

というものでした。

 

これでは社会の基本単位でもある、家族の中でも思考のやりとりを学べません。

小耳にはさむ状況が難しい難聴児なので、リアルタイムの家族の会話がとても大切なことがよく分かりました。

 

また、補聴ができているお子さん(会話域に閾値がある場合)には

「聞こえる子として育てること」

という話がありました。

聞こえないことを前提にすると、必要以上に平易な言葉で語りかけたり会話量が減ったり、語彙力が伸びません。うちの中では聞こえる子と思って関わっていくことにより、自然な声かけにつながる。

私はそれまで息子を聞こえない子と思って療育していました。言葉を覚えるのが苦手な子という枠で息子を見ていました。

いろいろ教えようと言葉を短く、簡単に、同じことを繰り返していたから私自身が楽しくなく、もしかしたら息子にも伝わっていなかったのかもしれません。

まずは自分が変わろうと決めました!

 

ただし、トップダウンの時期では、子どもの聞こえにくさに寄り添ってあげること。

どうしたら聞こえるのか(聞く位置、ロジャーの活用など)、聞こえなかった時はどうしたらいいのかを考え、本人の苦手な穴を見つけてフォローする役回りに。

 

人工内耳を装用して28週間目の気づき


  • 発語

しゅっぱつ(こぶしをあげて「っぱーっ」)
パン
いっしょ

「ワンワン」の発音が聞き取りやすくなりました。

  • その他

色の概念が定着しました。

くまのひも通しで、赤い色のひもに赤いくまさんだけを通したり、
黄色の人形(きいろっち)を持って、パンツの柄の色と「いっしょ」と教えてくれました。

今後は色の音声理解をできるように、二語文の言葉かけは「色」を意識していくことにしました。

【家庭療育】指先遊び(1歳~3歳)巧緻性(こうちせい)を育てる 指先の器用さを巧緻性(こうちせい)といいます。 幼児期に鍛えることで脳の発達を...
色の概念は色分けから(人工内耳装用22週間目)※補聴器を装用しても音の反応が全くなかった息子。2012年3月、1歳6か月で人工内耳手術をしました。 『お耳の成長記録』として、人工内...

 

また、オーブントースターの「ジジジジジ」というタイマーの音が聞こえるって教えてくれました。

息子からは見えない位置にあるので、最初は何の音っていう感じでした。抱っこしてあげて見せてあげると、

トースターを指差してから手を耳に当てて「聞こえる!」

と教えてくれました。ジェスチャーの二語文ですね。

 

まずは、丁寧に。そして、気長に言葉かけしていきましょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。

色合わせに☆