小児の人工内耳適応基準がこ「日本耳鼻咽喉科学会ホームページ」に載っています。
http://www.jibika.or.jp/members/iinkaikara/pdf/artificial_inner_ear-child.pdf
2014年に小児の人工内耳適応基準が変わりました。
ざっくり言うと、適応年齢が一歳半から一歳以上になり、人工内耳の両耳装用が有用な場合はこれを否定しないとされました。
これによって適応年齢の引き下げと両耳人工内耳装用の道が拓けました。(従前より手術可能な病院はありましたが)
適応基準の見直しにあたっての解説には、以下のような問題点が同時に記載されています。
1.年齢あるいは発育のために、手術を受けることについて自己の意思で決定することができない。
2.年齢あるいは発育のために、正確な聴力を把握しにくい場合がある。
3.人工内耳は蝸牛内に電極を埋め込む手術であり、残聴を失う可能性がある。
4.聴力レベルが90dB以上であっても、療育によっては補聴器で対応できる場合もある。
5.療育の状況は、地域によって違いがある。
上記の1、3、4、5は、適応基準の変更に関わらず、先天性の小児難聴の人工内耳手術についてまわる問題ですが、
基準の変更で適応年齢が下がったことにより、上記2の「年齢あるいは発育のために、正確な聴力を把握しにくい場合がある」が一番悩ましい問題かもしれませんね。
補聴器の装用により、呼びかけに振り向いたり、声がよく出るようになったり、いろんな兆しがある場合もあります。
音はどうやら聞こえていそうだけど、補聴器装用の閾値はどれくらいなのか。
オージオグラムのスピーチバナナに入っていれば補聴器の装用効果は高いといえそうですが、他覚的に音の反応をみるような聴力検査の場合、検査する場所や人によってバラツキが出ることがあります。
複数の病院や療育施設で検査を受けて一致しない時は慎重になりますよね。(ABRで判るのは概ねの裸耳聴力で、補聴の程度は分かりません)年齢が引き下げられたことにより正確な聴力を把握するのは難しいこともありそうです。
ところで、わが家の手術までの経緯ですが、
息子の裸耳聴力はスケールアウト。補聴器の装用を約1年間しましたが、太鼓の音すら無反応。音に対する反応は皆無でした。
こんなことから、年齢や発達のためでないことは疑いようがない重度難聴。上記2については悩みませんでした。
わが家が特に悩んだのは、上記1でした。
「年齢あるいは発育のために、手術を受けることについて自己の意思で決定することができない。」
音声言語と引き換えに、一生頭に埋め込んだインプラントと付き合っていくのは息子。息子の意思が伴うまで待つべきなのか悩みました。
でも今の時期を逃すと息子ほどの重い難聴では人工内耳の装用効果はあまり期待できなくなります。それは、音が聞こえることと、言葉を理解することは別だということです。
言葉を知らない赤ちゃんです。聞こえた音を言葉として理解して話すまでには時間がかかります。そして音声による言語獲得には臨界期があることを知りました。早く音を、声を聞かせてあげたいという気持ちが最後には勝り、息子に将来聞こえてよかったと言ってもらえると信じ、人工内耳手術を受ける決断をしました。
手術を決断するまでは、多くの葛藤があると思います。
いろいろな選択肢があることを知ったうえで、お子さんの将来を描いてみてください。
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成人の方の人工内耳適応基準
http://www.jibika.or.jp/members/iinkaikara/pdf/artificial_inner_ear-adult.pdf
人工内耳について
http://www.jibika.or.jp/citizens/hochouki/naiji.html
人工内耳Q&A
http://www.jibika.or.jp/citizens/hochouki/qa.html